HUNTER×HUNTER ハンター×ハンター (作者:冨樫義博)
女子大生がジャンプの名作HUNTER×HUNTERをマニアックな目線から語る
○HUNTER×HUNTERとは?
私はこの作品に出合ってから約11年になりますが、未だに飽きることがありません。何度読み返しても面白いのです。それはこの漫画の、人間の闇の部分を忠実に描き出すストーリー、絵柄が、堪らなく好みだからです。あくまで紙面上の物語ですから、勿論非現実的な要素は多く含まれますが、それにしてもH×Hにおける人間関係や、登場するキャラクターたちは妙にリアリティがあります。
まず作品の紹介を。HUNTER×HUNTERとは1998年から週刊少年ジャンプにて連載されている少年漫画です。作者はあの「幽遊白書」や「レベルE」でおなじみの冨樫義博さんですね。
「バトルもの」「スポーツもの」など、一口にジャンプの作品といっても沢山ありますが、H×Hはその中でも「バトルもの」がメインの漫画かなあと、個人的には思います。元々は主人公のゴン=フリークスが行方を眩ました父親(ジン=フリークス)の職業である「ハンター」を目指し、その中で出会った仲間と絆を深めながら、展開を繰り広げるという冒険活劇です。
あえて「元々は」と書いたのは、次第に「冒険」の要素はどんどんと薄れていって、やがて敵味方の心情が複雑に絡み合う純文学のようなバトル漫画になってくるからです(笑)
○H×Hの構成
・ハンター試験編
・キルア奪回(ゾルディック)編
・天空闘技場編
・主人公里帰り
・ヨークシン(幻影旅団)編
・グリードアイランド編
・蟻編
・選挙、アルカ編
・暗黒大陸編
まず、大まかなあらすじの解説をしますと、ハンター試験編で主人公は「キルア」「クラピカ」「レオリオ」という主な三人の仲間をつくり、ハンター試験に合格します。特に「キルア」とは年も近いため一番仲のよい友達となったのですが、キルアはゾルディック家という暗殺一家の息子でした。彼は暗殺一家の跡取りという、決められた人生が嫌で家出をし、ハンターになることを望んだのですが、ハンター試験に潜り込んでいた兄の「イルミ」によって強制的に試験を辞退させられました。おまけに、「お前は人というものを殺せるか殺せないかでしか判断ができない。彼の側にいれば、お前はいつか彼を殺したくなるよ」と主人公のゴンとの絆までを否定し、キルアは実家に帰ってしまいます。それを聞いて逆行したゴンは試験が終わると、クラピカとレオリオの二人と共に、キルアを連れ戻しにゾルディック邸を目指すことにします。そしてキルアを奪回するのがゾルディック編です。キルアを連れ戻した三人は、それぞれの目標に向けて歩を別ちます。ゴンはキルアの案で、お金を貯めるため、二人で天空闘技場に行くことにしました。ここから天空闘技場編です。そこで二人は「念」を覚えます。ナルトでいうチャクラですね。この念によってさまざまな能力や必殺技を使えるようになるのですが、「念能力」を習得することによって「ハンター裏試験」に合格したことになります。お金も貯められ、念能力も習得できた二人はくじら島というゴンの故郷へと里帰りします。そこで二人はジンの残した手がかりである「G.I」というゲームの存在を知りました。そのゲームがオークションに出品されることを知り、二人はヨークシンに向かいます。ここからヨークシン(幻影旅団)編です。二人はレオリオと再会します。
クラピカは、クルタ族特有の「緋の目」を奪い、虐殺した幻影旅団への復讐を果すため、ブラックリストハンターを目指していました。クラピカも無事、裏試験に合格し念能力を習得したのですが、仲間の「緋の目」がオークションに出品されることを知り、「ノストラードファミリー」というマフィアの娘ネオンを護衛するため、ヨークシンに訪れます。
また、幻影旅団はオークションの出品物を全て収奪するために団員を全員終結させ、ヨークシンにやってくることになりました。……そうしてメインメンバー+敵が全員ヨークシンに集まって、どのような展開になるか!?続きは是非、本編を読んでくださいね。
ゴンとキルアの二人は「G.I」をゲットすることができなかったので、ゲームを入手するという選択肢を捨て、「G.Iを落札した人物にプレイヤーとして雇ってもらう」ことにしました。説明を省いておりましたが、「G.I」は念能力者のみがプレイできるゲームのことです。努力の甲斐あって、プレイヤーとして雇ってもらった二人はゲームの世界に突入します。これがグリードアイランド編です。ビスケという念能力者に鍛えてもらって、無事ゲームをクリアした二人は、その賞品として得たカードを使用して、ジンに会いにいくことにしました。しかし、それを見越していたジンによって、「カイト」という人物のもとまで飛ばされてしまいます。カイトによって二人は、「キメラアント」という存在をしりました。人間を食料とするキメラアントとの壮絶な戦いがキメラアント編です。
○個人的なH×Hの楽しみ方
まず、この作者(冨樫義博)は心理描写がものっっっすごく上手いです。
且つその表現力が半端ないのです。
皆さんも、漫画やアニメのとあるシーンで、体や心が震えた経験をされたことがあるでしょう?そうです、体が震えます。H×Hは表現力に富んでいます。例えばどんな表現がうまいの?と聞かれれば、人間の負の感情、負の側面、負の性質、心の葛藤です。それらが、巧みなストーリー、真に迫る絵柄で表現されています。
主人公が明るい性根なので、一見すればH×Hは希望に満ち溢れているように見えますが、ひとたび読み進めてみればダークサイドが延々と展開される非常にドロドロとした漫画です。
例えば、メインの主人公であるゴンとキルア。
作中でキルアがいうように、この二人は「光と闇」です。純粋で、目的があって、真っ直ぐなゴンと、人を殺すことだけを教育され育ってきたキルア。キルアはゴンと過ごしている時は明るそうな「少年」ですが、ひとたびゴンから離れると「闇の住人」に戻ってしまいます。平気で人を脅しますし殺しもします。それに情で動くことが少なく、常に利益を考えて行動します。兄のイルミから教え込まれたように、勝ち目のない敵に挑むことができず、ついにビスケから「あんたはゴンを見殺しにするだろう」とさえ宣告されます。キルアは「ゴンだけは」と強く思う反面、たった一人の親友にさえ命を賭すことができず、己の身の方が可愛い自分を認めることができません。そんなキルアの心の葛藤を知ることなく、ゴンは真っ直ぐに目標に向かって進んでいきます。そんなゴンが、キルアは眩しくて仕方がないのです。
○ヨークシン編
~個人的にオススメ➀
「ハンターハンターってつまらなさそうだなあ」と思う方は、取り敢えず、このヨークシン編まで読んでみて下さい!そして「絵が雑だし、下手だし、読む気が失せる」という方も、とりあえず、読んでみて下さい。作者は、本気を出せばとてっつもなく絵が上手いです(笑)
ヨークシン編は、別名、幻影旅団編といいます。幻影旅団とは、念能力者による盗賊集団。メンバーは殆どが、流星街という地図上には存在しない街の出身者です。そこは一言で例えるなら「ゴミ箱」。人間、物、なんでも要らないものが捨てられる街です。かれらは戸籍もなく世間的にも存在しない人物で、親や家族もおりません。そのような街で育った彼らには道徳観や倫理観が存在しません。
自分の命も人の命も大事に思えないから、平気で人の物を奪い、惨殺する幻影旅団と、彼らに一族を虐殺されたクラピカ。けれど、団員たちは血も涙もない連中なのではなく、唯一団員だけは家族のように大切に思っています。ですので、クラピカによって団員の一人が殺されると、彼らはたちまち犯人捜しを始めます。
また、ゴンたちは「幻影旅団を止めたい」と言って、クラピカと手を組みます。
ヨークシン編はそれぞれの思いが交錯する名シーンばかりです。
ちなみにここで私が一番好きなシーンは、「旅団が全員死んだ」と聞いたクラピカが、緋の目を持って帰路につくところです。
「誰でもいい気分なんだ 別にお前でも」
結果的に旅団は全員生きていて、死体はフェイクだったのですが、蜘蛛が死んだと聞いて復讐の矛先を失ったクラピカの虚無はぞっとするものがあります。
○グリードアイランド編
~個人的にオススメ②
ヨークシン編から一変してこちらは大変少年漫画らしくなっております。涙もあれば感動もあり、そのための努力もあり絆もあり……勿論、なんたって描いているのが冨樫さんですので、グロテスクな描写は多々ありますが、それ以上に読者をワクワク、ドキドキさせてくれること間違いなしです。冨樫さんはゲームがお好きとのこと。G.I編はそれが遺憾なく発揮されたストーリーですね。細かい設定は読者を大いにゲームの世界へと引込んでくれます。
G.Iでは全てのアイテムを入手するとゲームクリアになり、二人は勿論クリアを目指すわけですが、同じ念能力者が集うゲーム内ではアイテムを奪う手段として殺人がおきることもしばしば。つまり、強くなければゲームのクリアはできないのです。まだまだ念能力者としては半人前だったゴンとキルアは、ビスケという最強の念能力者の弟子になり過酷な修行を積んでいきます。
一番興奮したのは、「一坪の海岸線」を手に入れるため盗賊に戦いを挑む場面。
ドッヂボールはまさかの敵である「ヒソカ」が二人と協力してレイザーを倒すことに!!
此処で興奮しなかったファンはいなかったでしょう!!
ドッヂボールという子どもの遊びをここまで面白く描くことのできる漫画家も数少ないでしょうね。
○まとめ
最後に、もう一つ好きなシーンを。ゾルディックの洗脳を受けて育ったキルアが、脱皮して本当の自分を取り戻すところです。
ちなみにこちらはキメラアント編。ひたすらゴンを守るために奔走するキルアがやたら恰好いいです。今までのキルアの悩みを追ってきた私達(読者)だからこそ、この場面は感動するものがありますね。
私は人よりかマニアックな性分ですので、H×Hの闇の部分ばかりに惹かれてしまうわけですが、純粋に読んでいて面白い漫画です!ストーリーは勿論のこと、個性的なキャラクターも魅力的ですし、戦闘シーンは他の漫画に比べて非常に分かりやすく描かれています。
分かりやすいというのは、絵がごちゃごちゃしておらず、誤魔化しもなく、簡素なのに迫力があります。また、主人公サイドのみならず、脇役たちの考えや心理も非常に深く繊細に表現してくれていて、どのキャラクターにも感情移入ができます。
プロフィール
齋藤 禮花 20代 和歌山県
近畿圏内で生まれ育ち、現在は自然の豊かなところで仏教の勉強をしています。文章を書くのが好きで、将来はライター志望。
家の台所で料理を作りながら、凛として時雨とTHE YELLOW MONKEYを大声で歌うのが最近のマイブームです。