でろでろ(作者:押切蓮介)

妖怪ドタバタコメディ でろでろ

耳雄「それはね、留渦ちゃん。お兄ちゃんはオバケになめられたくないんだ!!」

主人公耳雄は霊感体質の不良の中学生。両親は外国へ、家には妹と犬一匹。不良故か、幽霊たちになめられたくないと思っており、人を脅かす幽霊、妖怪を殴り、蹴り、時には泣かせて、返り討ちにしていく 。そんな非日常な日常を過ごす日野家。勿論、幽霊は耳雄だけでなく、耳雄の妹の留渦、飼い犬のサイトーさん、クラスメイトの委員長、はては妖怪に襲われることも。

この漫画はオバケの痛快シュールホラーギャグ漫画である。色々詰め込まれているので、明確なジャンル分けは難しい。だが、読んでいくと独特の心地良い面白さがある。

そんな、でろでろの面白さを紹介していこう。

でろでろの世界観

では、世界観の紹介をしよう。
ギャグ漫画なので緻密な設定ではないが、面白みのある設定である。日野家は霊感体質があり、主人公の日野耳雄も霊感体質がある。この霊感体質とは霊を引き寄せたり、霊と話したり見たり触れたりすることが出来る体質のことだ。しかし、主人公だけしか霊は見えない訳でなく、ほとんどの霊はクラスメイト達からも見える。よくあるホラー漫画では、一部の人間しか見えないことが多い。これは、でろでろの世界観の特徴だ。そして、もう一つの特徴が耳雄の暴力による撃退である。全ての撃退方法が暴力というわけではないが、殆どが暴力である。出てくる霊や妖怪も様々で、奇妙な怖さと不思議さを出す絵になっている。後で、詳しく紹介するが、登場する妖怪達が人間社会の慣習から生まれたものや何気ない物のモチーフにしているのも面白い。ホラー要素だけでなく人情的な心温かくなる話も面白い。

魅力的なキャラ
でろでろには魅力的なキャラクターが出て来る。彼らについて、軽く触れておこう。

日野耳雄(ひの みみお)
この作品の主人公。不良の中学三年生。 委員長 曰く「妖怪ハンター」。シスコンである。妹の留渦のためなら死神と戦い、自分の寿命も賭けるほど妹を大事にしている。身体能力が高く、喧嘩も強い。また、霊に対して怖がることはなく、逆に怖がらせることもある。行き過ぎた愛情により妹には煙たがられている。だが、兄妹で外出することもあり、仲は良い。愛犬のサイトーさんとは以心伝心の仲良し。多くの幽霊や妖怪に肉体的暴力で対抗し、留渦や委員長、美咲などから頼りにされる。欲望に弱いが情には厚い。子供の霊は積極的に助けたりしている。両親は仕事の関係でパリに在住しているため、妹と愛犬サイトーさんの2人と1匹の生活。

日野留渦(ひの るか)
耳雄の妹。中学生一年生。オカルト耐性が異常に高い。家事担当。性格は耳雄と対照的でクールな性格をしている。本人曰く「不感症」。普通じゃない人間と友達になることが多い。その際、「友達を見る目がない」と耳雄に言われた。 耳雄が霊に暴力を振るう事を嫌っているが、兄自体を嫌っているわけではない。耳雄に冷たい態度を取るが、兄思いである。初期ではクールさが際立つが、漫画の後半では感情豊かになってくる。

サイトーさん

日野家のペット。オバケが大の苦手。霊にいじめられていた子犬を耳雄が拾ったのが出会い。名前の由来は、段ボール箱に書いてあった斉藤ナスという言葉からである。電車の切符を買ったり、箸が持てたり、二足歩行が出来たり、バイト先でセメントの配合を覚えたりと、頭がすごくいい。常識が分かる良識犬。妖怪に家(犬小屋)を乗っ取られたり、誘拐されたり、詐欺にあったり、色々な不幸にもあっている。辛そうな顔はデフォである。人間の言葉も理解できる。耳雄とは大の仲良し。

委員長/平川和彦(ひらかわ かずひこ)
耳雄のクラスメイトで友人。頭脳担当。成績優秀。重度の愛猫家。みんなから委員長と呼ばれる。よく心霊現象に巻き込まれる。霊や妖怪は元々苦手だったが、後半は慣れてきた。最終巻では、自力で妖怪を退治するなど、耳雄に頼らない成長を遂げる。

相原美咲(あいはら みさき)
耳雄のクラスに転入してきた内気な転校生。三つ編みがチャームポイント。霊を引き寄せる体質があり。そのせいか耳雄によく助けられる。耳雄が好きだが、妖怪のせいで空回りすることが多い。当の耳雄からは女の子として見られていない。

相原水面(あいはら みなも)
美咲の姉。社会に揉まれる社会人。大体酔っ払って登場する。内気な妹とは対照的に自由奔放で物怖じしない性格。素面だと妖怪を怖がったりするが、酔っ払っている時には全く動じない。かなりの酒豪で、常にシェイカーを携帯している。上司の嫌がらせをいつも受けている。

バンダナ
耳雄の不良仲間。実は、第一話から登場しているモブ。ほとんど名前で呼ばれないが、本名は夏目。委員長と同じく、良く霊現象に巻き込まれている。

白石(しらいし)
耳雄のクラスメイト。女子。犬のジョージの飼い主。作中の犬岳で、ジョージが人間「犬山丈二」となる、悲しい別れをすると思いきや、人間になった丈二は耳雄のクラスに転入してきた。そのため、丈二に愛の告白をするが、結果は断られた。

犬山丈二(いぬやま じょうじ)
耳雄のクラスメイト。元犬(ジョージ)。犬岳で修行を積んで人間化した。耳雄達と行動することも多い。霊に弱い。かつての飼い主である白石とは仲がいい。人間になったが、人間の言葉は話せない。サイトーさんと意思の疎通ができる。

センパイ/久我山隆志(くがやま たかし)
耳雄の先輩。18歳。マザコン。耳雄からは先輩と呼ばれている。悪仲間からは一目置かれる存在だった。初めは走り屋だったが霊被害のせいで引退。蛙の卵工場などのバイトに就くが、やる気がなくニート生活を送る。最後は妖怪の手助けのお陰で定職に就く。

須藤みちこ(すどう みちこ)
留渦の友人。性格は霊をいじめるS気質。心霊マニア。霊魂を食べる心霊喫茶の常連。

カントク
人気キャラ映画館「シネマ淵ヶ関」の館長兼映画監督であり、でろでろ妖怪名鑑14に載る妖怪。耳雄の友人。汚いガチャピンのような姿をしている。童貞。一般人からは気持ち悪がられており、委員長はカントクを苦手としている。主にドキュメンリーを撮っている。普段は内気でおどおどしているが、映画館の中では性格が変わり、マナーがなっていない観客を襲ったりする。

びくっとサン
でろでろ妖怪名鑑66の妖怪。カントクと仲良し。ピーナッツ状の頭をしていて、中には醜い小人が入っている。緊急の時や驚いた時には頭が割れ、小人が飛び出してくる。人間が驚く姿が大好きで、驚いた姿をビデオに撮ってコレクションしている。妖怪「山んバー」に童貞を奪われ、舌を噛み自殺したが、カントクが頭の中にいた小人を育て、再びびくっとサンに成長(転生?)した。

でろでろに出てくる妖怪、幽霊たち
でろでろに出てくる妖怪、幽霊達は様々である。でろでろの妖怪たちは人間の醜さ、弱さを題材としており、勧善懲悪だけの話でもないのも魅力だ。これらの妖怪は怖さもあるが、どこか親しみやすさも感じる。従来の妖怪とは違う、日常と隣接している親しみやすさだ。押切先生の独特な妖怪世界が感じられる作品である。
おすすめしたいお気に入りの話

最後に私のお気に入りの話を紹介しよう。217話の「星の散策者」である。耳雄が夜歩いていると、迷子の少女に会う。実は、少女は交通事故で亡くなった幽霊であった。
「・・・死んだらお星様になるってどっかで聞いた・・・」
「・・・・でも、あんな真っ暗な所に行きたくない・・・」
という少女に対し、
「よし、おにいちゃんが星がめちゃんこ見える所に連れてったる」
「寂しくない所に連れていってやるよ!!」
そういった耳雄が少女と一緒に夜中の散策をする。少女と一緒に星を見るために、夜通し散策するお話である。この後の話は、実際に読んでもらいたいので省略しよう。

最後に
でろでろは人間味ある妖怪や、逆に妖怪のような人間も出て来る。通常の例が出てくるようなお話とは違い、霊が人間に襲われたり、何気ない慣習を題材にしていたりするのも魅力だ。主人公の耳雄は人を襲う霊でも助けたり、成仏出来ない霊に付き合ったり、情にもろい一面がある。ホラー漫画でありながら、心温まる話も多い。
ぜひ、一読の価値があるので、手にとってほしい。

プロフィール
garoa1300 20代前半 東京都(富山県出身)
駆け出しのライター。ライター歴は一年も満たない。バイトしながら、副業でライターをしている。ライターでの仕事はブログ記事の代筆、小説の代筆がメイン。読書と創作と古本屋巡りが趣味。雨の音を聞きながら、寝るのが大好き。